第5話 エピローグ - ピップよ永遠に!

魔獣は大音響をたてて床に倒れ伏した・・・

今一度チーズに突き刺さったエクスカリバーの

柄に手をかけると、するりと引き抜くことができた。

第4巻から捜し続けていたエクスカリバーも

見つかってしまえば、あっけないもんだな。

床にある把手つきの扉をあけると、ここは謁見室の

天井にあたる場所だったようで、5メートルほど下に

ブロッグワート王の姿が見えた。

王の前には、娘のケイティと、北のブラッグワート王の

息子、ウィリー皇太子の姿も見える。

王が困り果てたように頭を抱えており、その父親に

対して、娘のケイティ王女が言った。

「お父様、もういいかげんに、北の城といがみあうのは

やめにしたらどうなの?」

「・・・・・・」王は黙り込んだままだ。

「わたし、お父様がなんとおっしゃろうとウィリーと結婚

しますわ、そして、南北に分かれてのいがみあいは、

もうおしまいにするわ」

「ダメだ、ダメだ、ダメだっ、ブラッグワートの方から

謝ってこんかぎり、わしは断じて和解もせんし、

おまえたちの結婚も認めん」

王女はかたわらのウィリー皇太子を肘でこづくと

うながされるようにウィリーが口を開いた

「私の父も、陛下とまったく同じことをいっております。

ブロッグワート王が謝るなら、すぐさま和解に応じ、

われわれの結婚も認めてくれると・・・」

あとを継いでケイティ王女がまくしたてる。

「お父様たちはそれでいいかもしれないけど、

わたしはイヤッ、こんなバカげた争いごとに

付き合っていたら、わたし、おばあちゃんになっても

ウィリーと結婚できないわ!」

ケイティ王女はそういうと立ちあがり、ウィリー皇太子の

腕をとって

「さあ、ウィリー、行きましょっ、親同士が勝手なことを

しているがのだから、わたしたちだって勝手にさせて

もらいましょ!」

そういい残すと、ふたり手をつないで宮殿を出て

いってしまった。

ケイティ王女強いな・・・ほとんど彼女の独壇場

だったぞ

ブロッグワート王がため息交じりに天を仰ぐと、

天井の穴から事のいきさつを覗いていたピップと

目があってしまい、しばし気まずい沈黙の後、

ピップが王の前に飛び降り、エクスカリバーを

無事奪還したことを報告する。

「おお、ピップよ、もう二度と戻ってこられまいと

思っておったが、さすが聞きしに勝る勇者だ!」

王はピップの生還を褒めたたえると、心から

悔いるように言った。

「名王アーサーに詫びといてくれ」

このブロッグワート王の失態で大騒動が勃発

してしまったわけだが、聞けばブロッグワート王も

兄のブラッグワートと和解し、ウィリーとケイティの

結婚を許す、と言う。エクスカリバーも無事戻って

きて、これ以上の騒動にもならなそうだし、まずは

めでたしめでたし・・・てとこかな

ブロッグワート王からお礼にもらった三つ目獣

(なぜ、普通に馬とかじゃないのか・・・魔獣王国

を脱出するには、普通の生き物じゃだめなのかな)

に乗ってピップは、一路キャメロット城へと向かう。

***

所かわって、ここはグラストンベリの村を見おろす

丘の中腹にあるキャメロット城。

まわりには、七千人にもおよぶ反乱軍と化した

農夫たちに完全に包囲されている。

円卓の会議室ではアーサー王が打ちひしがれた

ように坐り、物思いにふけっていた。

「どう見ても・・・解決の道はない。城の外にいるの

は、異国の侵略軍ではない。わが王国を支える

民なのだ。血迷ったとはいえ、みな同国人・・・

同胞の民を攻撃するなど、われらの良心が許さぬ」

ギャラハッド卿やパーシバル卿が決戦を唱えるが

「いや、解決の道はない---」

王がつぶやくように繰り返すと、ギャラッハッド卿が

そっと後を継いだ。

「---エクスカリバーが発見されない限り」

そのセリフとともに、騎士たちはいっせいに、

とがめるような視線を隅の老人に向けた。

黙って席についていた白いいローブ姿の老人、

魔術師マーリンに。

(やれやれ、いつも最後はこうなるんじゃ。

責任を全部わしに押しつけおって)


城の外では反乱軍が野営地で総攻撃に備え、

軍隊のまねごとをしている。そして、ひとつのささやきが

駆けめぐる---攻撃は夜明けとともに!

そう、決戦は目前にまで迫っているのだ。

そんな緊張感の中、物音が聞こえてきた。

音はしだいに大きくなり、近づいている。

パッカパッカ・・・パッカパッカ・・・パッカパッカ・・・

大きな獣の足音だ。そこに荒い鼻息が混じる。

「おい、誰だ!」

城の見張り番がおびえて叫んだ。

「怪物だ!」

「悪魔だ!」

「ドラゴンだ!」

「地獄から来た化け物だ!」

散々な言われようだが無理もない。それはアバロンでは

決して見ることのできない魔獣王国の使者である

三つ目獣なのだから。そして、その三つ目獣の背中に

乗っているのが我らがピップなのだ。

「ピップか?」

兵士の一人が正体に気づきつぶやいてから、

仲間の方を見た。

「まさか・・・」

「いや、まちがいなくピップだ・・・」

兵士たちはささやきあい、湧きあがる興奮とともに

城内に向かって叫んだ。

「ピップだぁ、ピップが帰ってきたぞお!」

城壁を見あげたピップは、ゆっくりと腕をあげ、

偉大な剣を高々と掲げた。

「エクスカリバーだ!」

その歓声は、雷鳴のごとく遠くまで響きわたった

エクスカリバーだ・・・エクスカリバーだ・・・

エクスカリバーだ・・・エクスカリバーだ・・・

声は城内に達し、アーサー王と騎士たちが

黙って沈みこんでいる円卓の会議室へと届いた。

魔術師マーリンはころっと破顔一笑し、王に告げた。

「陛下、王国はまた救われたようですな」

ピップの奪還したエクスカリバーによって、

アーサー王の権威は保たれたのだった。

めでたし、めでたし

***

三つ目獣にまたがって、意気揚々と

マーリンの隠れ家に戻るピップ。

サイコロ型の隠れ家は大きな荷車に積みこまれ、

ロボットがギクシャクと周りを動き回っていた。

ロボットを見ると、頭と胴体は木箱、手足は木の枝で

できており、頭の上にはワラの髪の毛が載っている。

ペンキで描かれた顔が、ピップにどことなく似ているが?

「おお、ピップではないか!」

いきなりサイコロの窓からマーリンが顔を出し、

身を乗り出して拍手した。

「えらいっ、すごいぞ、ピップ、よくやったな!」

今回のピップの功績のおかげで、マーリンの恩給が

また上がったそうだ。なんとも現金な爺さんだよ

そんな上機嫌なマーリンにロボットのことを訊くと、

人造人間の”ピップ・ジュニア”ということらしい。

そんなものを造るなら、ピップに一言許可ぐらい

とってくれれば良いものを・・・

そんな事には意にも介さず、マーリンはピップのうしろの

奇獣に気づいて、目をみはった。

「三つ目獣ではないか。わしのみやげか・・・嬉しいぞ、

ピップ。ちょうどいいときにきてくれた」

いや、そんなことは一言も言っていないが・・・

しかし、マーリンはピップの事などお構いなしに、ロボットに向かって、

「おい、P・J、その獣を荷車につなぐんだ!」

すでにアダ名まで付けられた人造人間がせっせと

三つ目獣にロープをかけて荷車につないでいる。

「どうした、ピップ、冒険に疲れてしまったのか、うん?」


「いえ、そんなわけじゃなくて・・・」

ピップは反射的に否定したが、実際の所はどうか、、、

暗黒城のアンサロム討伐から数えて、今回ではや5回目の

クエスト達成だ。疲れてない訳が無い。

そんなピップの様子を察してか、マーリンが続ける。

「いや、そうじゃ。そうに決まっておる。これまで何人もの、

冒険者を見てきたわしの目に狂いはない」


やはり疲れてしまったのだろうか・・・するとこのような

冒険からもそろそろ足を洗う時期に来ているのかもしれない。

ピップ・・・いや、このブログの筆者であるユニコーンとして、

そろそろグレイルクエストの冒険記も幕引きにしたいな・・・

そんなことを考えていることを察知されたのだろうか、

マーリンの口から機先を制するかのように話が続く。

「だが、おまえの運勢には、すでに次の冒険が

暗示されておる。近い将来、恐るべき呪いでアバロンは

危機に瀕するであろう。その災厄に関わりを持つ者の

名はすでにわかっておる。いや、ここで口にするわけには

いかぬ。予知の力というのは、いつだって繊細なものなんだ。

ま、おまえがいま手にしておる本のなかにこっそり記して

おいたから、あとでくまなく調べるといい」


なんと!エクスカリバーを奪還したことで、アバロンに災厄は

もうふりかかってこないんじゃないのかよ

世の中そんなに甘くはないのね

「さあて、引っ越しの旅に出るとするか。P・J、出発じゃ!」

三つ目獣にまたがったP・Jが、力強く手綱を引くと、

サイコロの家を載せた馬車ならぬ獣車が走り出した。

「ピップよ、新居に落ち着きしだい、連絡する。それまで、

おまえのつまらぬ時代に戻っておれ。ただ、住まいには

相当うるさいほうだからな、少しばかり時間がかかる

やもしれん」


この調子では、ピップがこの冒険の世界から逃れる

ことは、まだできそうにないな。

いや・・・このゲームブック・・・グレイルクエストが在り続ける

限り、ピップは何百回も何千回も様々な読者によって、

冒険に挑戦させられ続け、14にも行き続けるに違いない・・・

そんな苦難を乗り越えられるのは、ピップ・・・お前ただ一人

だけなんだよな。俺からも頼むぞ、ピップ

「達者でな!」

マーリンはサイコロの窓から手を振りながらそう叫ぶと、

首をひっこめた。

パッカパッカ・・・パッカパッカ・・・パッカパッカ・・・

ぽかんと見送るピップを残して、サイコロの隠れ家を

載せた荷車は土ぼこりをあげながら、見る見る遠ざかっていき、

やがて地平の彼方へ消えていった。


グレイルクエスト第5巻「魔獣王国の秘剣」

- 完 -

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